ヒト上皮細胞再生因子(正式名称:上皮細胞増殖因子または表皮成長因子)の英語名は human epidermal growth factorであり、一般に hEGF と略称される。
hEGF は53個のアミノ酸から形成される一種のタンパク質で、スタンレー・コーエン博士によって発見された。
博士は hEGF の配列識別とその機能のパイオニアとして、1986年にノーベル賞を受賞した。
博士は、マウスの顎下腺抽出物から一種の新しいタンパク質(mEGF)を単独分離するすることに成功し、その物質が新生マウスの眼を開かせたり、歯の出現を促進するキーを握っていることを突き止めた。
EGF は人間が本来持っている細胞を再生させる因子のことで、皮膚の表面にある細胞に働きかけて分裂、集合を繰り返しながら、新しい細胞の生産を急速に促進する。これを有糸分裂という。
EGF は血流を良くし、血管を修復し、コラーゲンの蓄積を促す。火傷による皮膚移植や、角膜切開による傷の回復促進などの目的に、医療の分野で使用されてきた実績がある。
人間は年齢を重ねるにしたがって、hEGF の分泌量が減少していく。これが肌の老化現象の主な原因である。
EGF を肌に補給することにより、新しいみずみずしい皮膚細胞の新生を促すことができる。つまり老化現象を逆行させることができるといえる。
しかし高純度のEGFは、初期の国際マーケットでは1gで約8,000万円と高価で、コスト削減のため十数年の歳月を要した。
遺伝子工学の発展に伴い、大量に生産されるようになり、スキンケアの分野での利用が可能となった。
(ただし現在でも実験用試薬として少量の販売に関しては、50μgが14,000円【1g換算で2億8000万円】と高価である)
皮膚の表面にある受容体(細胞膜を貫通する糖タンパク質)は、EGF が細胞内で飽和状態となると、余分な EGF を受け入れることができなくなるという自動調節機能を持っている。
したがって大量に皮膚に投与しても、決して不必要に分裂や増殖を引き起こすことがない。皮膚の老化防止を目的とした化粧品の成分として、安全なものといえる。
EGF を配合した化粧品は、細胞の組織を活性化してシミをなくし、色素の沈着を予防し、皮膚の弾性を高めるなどの効果が期待できるため、今後大いに注目されるものとなろう。
上皮細胞再生因子は53個のアミノ酸から形成されるタンパク質で、人間及び哺乳動物の体内に存在する。
アメリカのコーエン博士は1962年、初めて上皮細胞再生因子を発見し、1985年にノーベル生理学賞を受賞している。
基本的な特性は、53個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、分子量は 6,200ダルトンである。
70年代コーエン博士らは、ヒト上皮細胞再生因子とマウス上皮細胞再生因子(マウスEGF)のアミノ酸は70%が共通であると発表した。すなわち mEGFの70%のアミノ酸序列が hEGF と同じということである。
哺乳動物の体内から EGF を取り出すには原料に限りがあり、製品の純度や製品の活性を挙げることは難しい。
ヒトの尿に hEGF が含まれているが、その量はわずかである上、正常な生物活性を有する 53,51ペプチド以外に、活性の低い49,48ペプチド、そしてさらに活性の低いペプチドが含まれる。
このことからヒトの尿から抽出した EGF は商品化には適さない。
またマウスの顎下腺抽出物も原料に限りがあり、工程も複雑で、製品の純度や活性も高くないという欠点がある。
ゆえに中国科学院は、hEGF を遺伝子工学の技術で製造する研究に着手し、1993年にその方法で hEGFを作ることに成功した。そして中国薬品生物検定所の検査により、アミノ酸配列や理化学的特性、生物学的反応など、人体にある hEGFと同一のものと判定された。
1994年末、中国衛生部薬品審査センターのT類新薬人体臨床研究申請の審査に合格し、中国の高純度活性 hEGF の大規模製造と応用の基礎となった。
hEGF は多機能の細胞再生因子で、細胞膜の hEGF 受容体と結合し、新しい細胞の生産を促進する。
hEGF の受容体とは一種の糖タンパクで、人体の細胞膜の表面に存在する。
つまり、傷を受けた皮膚を修復したり、紫外線などの有害物質から皮膚を守ったりと、皮膚の維持に重要な役割を果たす。
EGF と細胞膜上の EGF 受容体の結合は、飽和性と高度の敏感性を備えている。
つまり、hEGF は微量で細胞に作用し、しかもいったん EGF と受容体が結合すれば、その他の EGF 分子と細胞上の EGF 受容体の結合を阻止する。
同一の細胞は二つ以上の EGF 分子と同時に結合することはできず、その他の EGF 分子は、その細胞には余計なものとなってしまう。
hEGF は広範な生物学的反応を備えており、体内外の上皮や上皮組織の成長を促進する作用がある。
hEGF は潰瘍を予防したり、角膜の傷の回復や皮膚の損傷の修復などを促進する。この特性を利用して、アメリカやキューバでは、皮膚の損傷に遺伝子組換えによってつくった EGF の軟膏を使っている。
また hEGF は皮膚の上皮細胞の新陳代謝を促進し、消炎、鎮静作用があるため、皮膚の老化防止や若返りなどの目的で、化粧品用途にも益々の使用が期待される。
EGF の生物学的活性測定は、体外で細胞を培養して行う。
ヒト胚芽上皮細胞を体外で培養し、EGF を加えてある一定の時間培養する。さらに H−Tdr を加え、さらに数時間培養して、培養液を除いて細胞を固定する。
さらに細胞を炭酸ソーダ液で溶解する。
一定量を取り出してろ紙の上で同位素を測ると、その成長速度は 2〜2.5倍になることがわかる。
また MTT 染色法でも測定することができる。
化粧品中の EGF の活性度を確認する場合は、まずそこから EGF を抽出して上記の方法で測定する。
EGF は一種の活性ポリペプチドである。
EGF は酸やアルカリ、熱に対して安定であることが報告されている。
医療用軟膏や化粧品に通常配合されている原料が、EGF の活性に影響を及ぼすことはない。
通常配合されている原料とは保湿剤、防腐剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などである。
−20℃の無菌状態で hEGF は永久に保存できる。
遺伝子工学の技術でつくられた EGF と親水性基質はお互いに溶け合う性質があり、細胞生理活性の低下なしに最低2年間保存可能である。
EGF は、新生細胞の成長を平均 284% 促進していることが確認されています。
アメリカで行われた臨床試験では、EGFを60日間使用した後の細胞は、細胞量を大幅に増加させることが実証されました。
表では、50歳以上の人々においても、新生細胞の成長が改善されていることを示しています。
( 引用資料 :US Patent#5618544)
化粧品と言うのは直接人体の皮膚に使用する事によって、外見を美しくさせ、清潔を保ち、栄養補給をするというのが一般的な美用品の効果である。
その中でも日常的に必要な基礎化粧品と、美しさを際たたせる為の化粧品と、特殊用途の化粧品のそれぞれにわかれる。
最近、中国の外資系化粧品メーカーは、アンチエイジング剤と天然素材を配合した化粧品の研究開発に力を注いでいる。
特に、生物活性を有する細胞因子が配合された化粧品が注目されている。
皮膚を美しくするという事は、実は皮膚組織の細胞の生命力、栄養、代謝などの総合バランスが発揮されて初めて美しくなる事をいう。
h-EGFは人体細胞因子の 1 つで、人間の皮膚や粘膜、唾液に存在している物質である。
h-EGFの作用によって、体内の K+ と糖分などの低分子物質が大量にEGF細胞に受理された後、糖の分解量が増加して、RNAと蛋白質の融合が増加する。
約 2 時間後、h-EGFがDNAの合成を促す。
それにより、細胞を刺激し、分裂・増加を促進する。
これは非常に有効な過程である。
一旦DNAが合成を始めると、例え一時的にh-EGFが存在しなくても合成に支障を来たさない。
したがって、時々 h-EGF が含まれている美容クリームを使用するだけでも、定期的に皮膚に h-EGFを与えている事になるので、DNA細胞の合成と常備細胞の代謝、また皮膚の瑞々しさを保つ効果が上がる。
つまり、h-EGFは細胞内部の調節・皮膚組織細胞の栄養補給・物質の転化・物質の合成と代謝を促すので、新細胞と老細胞の転化がすばやくなり、いつまでも若々しい皮膚と皮膚の弾力性を保つ事ができる。
また、h-EGFはある程度のニキビとふきでもの防止作用もある。
さらに、しみ、ソバカスも、h-EGFの新陳代謝・活性化作用により淡くなる。
h-EGFを基礎化粧品の中に展開させて、その効果を最大限に利用し、皮膚の新陳代謝を高め、美容に役立てる事が有効である。
もし、h-EGFとヒアルロン酸を併用すると、さらに効果があがる。
なぜならh-EGFの主な効果は、RNA・DNAと蛋白質の合成を促進する事である。
ヒアルロン酸の中のすぐれた吸湿性、出湿性によって、細胞間と細胞内が同一水準を維持する事ができる。
このように、細胞液と細胞間液の各種類の栄養物及び無機塩濃度のバランスと自由移動がとれて、合成時に必要な養分は順調に細胞間に入り、細胞合成の為に最適な条件を提供した事になる。
したがって、合成の過程が順調に進む事が保証された事になる。
表皮の細胞中の特定の受容体 ( レセプター ) と結合
↓
細胞に情報を伝達、 pH 値及びフリーの Ca+ 濃度が変化、解糖及びタンパク合成が促進され、いくつかの特定の遺伝子の転写を促進
↓
その結果、 DNA 複製及び細胞増殖が行われる。
h-EGFを添加する際には、正しい方法で行うことが肝要である。
h-EGFの効能を十分に発揮させるためには、 h-EGFの生物活性を低下させぬよう注意する必要がある。
凍結乾燥末 (本品) をそのままの状態で添加しては ならない。
即ち、予め本品を室温で本品中のEGFの量の約10万倍の蒸留水又は生理食塩水で希釈し、その希釈液を所要量を計算の上添加する。